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林 文子

人を動かすのは「愛」


女性が活躍できる社会の実現を目指して



女性活躍の実現は

私の使命

私が18歳で働き始めた頃は、男性と女性の仕事の間には、明確な線が引かれていました。以来50年以上にわたり男性中心の組織で働き、民間の経営者も務めてきましたが、その中で、多くの優秀な女性たちが子育てを理由にキャリアを断念する姿を悔しい思いで見てきました。一方で、男女が共に強みを生かし合うことで、組織が活性化し、大きな成果を生み出すことも身を持って体験してきました。女性ならではの感性、生活者としての視点がもっと生かされれば、社会は一層活性化します。また、育児と仕事を両立できる環境は、女性のみならず男性にとっても働きやすいものであるはずです。

だからこそ、女性が活躍できる社会の実現は私の使命と思い、横浜市長に就任後、真っ先に保育所待機児童対策に取り組みました。当時、横浜市の待機児童数は、全国最多の1552人でしたが、保育所整備を加速させ、区役所にコンシェルジュと称する相談員を配置して、それぞれのご家庭のニーズを丁寧にサービスに結び付けるなど、ありとあらゆる手段を尽くし、3年で待機児童ゼロを実現しました。今や、日本中の都市が待機児童ゼロに挑戦しています。女性が活躍できる基盤をつくることで、働くことをあきらめていた女性たちが意識を変え、行動してくれたのは本当に嬉しいことです。



女性活躍の推進こそが

横浜の「成長の鍵」

また、女性活躍の推進こそが横浜の「成長の鍵」と考え、働く女性のネットワーキング、女性の就業・再就職・起業支援にも力を注いできました。横浜市では、女性の学びと交流の場である「横浜女性ネットワーク会議&ウーマンビジネスフェスタ」を毎年開催しています。起業支援では、女性専用のシェアオフィスの開設や起業準備の相談窓口の設置、事業の継続・拡大に向けたサポートを行い、8年間で316人の方が起業し、約85%の方が事業を継続しています。こうした取り組みが功を奏し、30代後半の女性の労働力率は、5年間で6.6ポイント上昇し、いわゆるM字カーブは確実に改善してきました。

目指すべきは、女性が男性並みに長時間労働する社会ではなく、男性も女性も、自分らしく生き生きと働き、持てる力を生かせる社会です。国連が2015年に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」のグローバルアジェンダの一つに「ジェンダー平等」が位置付けられている通り、女性の活躍は、世界共通の社会的課題です。私は、横浜でAPEC首脳会議が開催された2010年から、APECにおける女性と経済の議論に継続的に参画しています。横浜市における女性活躍の施策を共有し、各国・地域の女性リーダーたちと、信頼関係を築いてきました。こうした連携は、私にとって大きな力になるとともに、国を越え、多くの女性たちを後押ししています。

これまでの取り組みをますます進化させ、あらゆる女性の活躍を応援していきたいと思っています。



自分の可能性を信じ、

ぜひ一歩を

女性は、相手の気持ちに寄り添い、共感したり励ましたりすることが自然にできます。こうした共感力や受容力といった女性の強みは、組織のマネジメントにも大変役立ちます。私はこれまで、寄り添い、褒め、励ますマネジメントに徹してきました。一人ひとりと真摯に向き合い、共に働けることへの感謝を伝えることで、部下のやる気を引き出し、その結果、皆が生き生きと働き、業績も伸びるようになりました。すべての基本は「人」であり、共感と信頼がなければ、組織は成り立ちません。自ら歩み寄ることが人間関係づくりの鉄則です。私も人との関係を大切に、相手に寄り添い、全力を尽くすことで、多くの壁を乗り越えてきました。最終的に人を動かすのは、「愛」だと確信しています。

これまで、私自身が色々な道を歩んできて、今、女性たちにエールを送ることができるようになりました。働くことで人は成長し、人生が豊かになります。社会で必要とされる仕事は、なくなることはありません。ですから、大切なのは「これだ」と思ったら、やってみること。試行錯誤しながら全力で立ち向かえば、必ず道は通じます。あきらめずに、大いにチャレンジしてもらいたいと思います。

強さが求められがちな世界を、心豊かな世界に変えることができるのは女性です。自分の可能性を信じ、ぜひ一歩を踏み出してください。同じ志をもつ者同士がつながり活躍することが、社会に大きな変革を巻き起こし、後に続く女性たちの道を開いていきます。ご一緒に前へ進み、女性が輝く社会をつくり上げていきましょう。


横浜市長
林 文子

東洋レーヨン㈱(現東レ)等勤務の後、1977年ホンダの販売店に入社。BMW東京㈱代表取締役社長、㈱ダイエー 代表取締役会長、日産自動車(株)執行役員等を歴任。
ウォールストリートジャーナル紙「注目すべき世界の女性経営者50人」(2004年)、米フォーブス誌「世界のパワフルウーマン100」(05、06年)、ユーラシア女性フォーラム(ロシア連邦議会主催)「パブリック・リコグニション・アウォード」(18年)等に選ばれる。
2009年8月、横浜市長に就任、2017年8月より3期目。
現在、指定都市市長会会長、全国クルーズ活性化会議会長。
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